引っ越しからの左のお尻の痛みと坐骨神経痛
坐骨神経痛の原因は理解できていますか?原因を明確にすることで、改善までの方向性やスケジュールを明確化できます。
ここでは、お尻の痛みからくる坐骨神経痛についての症例を掲載いたしました。
来院者からの情報
60代 男性 自営業
(主訴)
- 2週間前から左の臀部に強烈な痛み
- 1ヵ月ほど前から左の臀部に違和感を感じていた
- 痛みが出てから病院に行きレントゲンを撮影。画像に異常は見られなかったので手術などは必要なく、坐骨神経痛の疑いがあるとのことでロキソニンと湿布を処方された。
- 近くの整体に3回ほど通院したが、全く改善しなかったため、当院に来院された。
- いろいろ自分で坐骨神経痛ストレッチや、クッションなどを試してみたが全く効果はなかった。
(痛み方)
- 寝ていたり立っている時は痛みがないが、歩行時や座っている時に痛みを感じる。
- 長時間座った後に立ち上がる際強烈な痛みを感じる
- これだけ通っても改善しないことから、この痛みは根本的に問題が違うのだろうと考えている。
問診
どこが痛む?
- 左側のお尻
痛みの種類は?
- 座っている時と歩いているときは強いコリ感
- 長時間座ってから立ち上がる時は臀部と太ももに強烈な痛みと痺れ
- 太ももの後ろにピリピリとした違和感
いつから痛む?
- 2週間前から痛みが発生し、1ヶ月前から違和感があった
きっかけは?
- はっきりとはないが、コロナの影響で4ヶ月前から在宅勤務になり、2ヶ月前から引っ越しをした
- 引っ越しした際に寝具を新しくした
既往歴あります?
- なし
痛みの現在の状態
- 悪化傾向
悪化要因
- 長時間の座位
改善要因
- 温めると少し楽かもしれない
問診では、様々な痛みの原因のヒントが隠されています。いくつかの坐骨神経痛の原因を予測して検査していきます。ここでは解剖学的な知識と想像力、統合力が必要になってきます。
情報を整理して推測します
- 臀部に負担をかけると強いコリ感と太腿に痺れ
- 長時間座った後には強烈な痛み
- 病院のレントゲンでは異常がない
- 寝ている時は痛みを感じない
- 太ももの裏にしびれ感を感じる
- 引っ越し及び寝具の持ち運びで臀部などにストレスをかけていた
- 温めると少しラク
- 病院での画像診断で異常がないことから、椎間板ヘルニアや狭窄症といった脊柱(神経の根幹)で生じる中枢神経症状の可能性は低い
- 坐骨神経は腰部の神経が叢になってまとまり、そこから足に向かって伸びる神経ですので、中枢神経(神経の根幹)が問題で無い場合、末梢神経(神経の枝)での問題の可能性が高くなりる
- 坐骨神経はお尻の深い筋肉の間をすり抜けてきます。この時に筋肉や関節が末梢神経に影響することで、坐骨神経痛の症状を呈することが多い
関わる筋肉の特定
坐骨神経がお尻を通る際に、問題が起こりやすい「梨状筋」と呼ばれる筋肉を確認。
触診検査
- 痛みが強いため、臀部全体が非常に緊張しており、触診だけでは梨状筋の確定はできませんでした。
- 弛緩させた状態で、一度深めに触診すると、強烈な痛みが再現されました。
筋力検査をしてみる
- 左の梨状筋の筋力は発揮できていましたが、力をいれる際に痛みが現れました。
関節のチェック
- 左の仙腸関節の前方上方変位及び右の仙腸関節の下方後方変位
- 左の股関節の内旋抵抗
- 左右の足の長さ(脚長差)が右1㎝の短下肢
神経支配の検査
- Freiberg testを行い陽性反応が見られました。(Freiberg testは股関節を他動的に屈曲及び内旋にすることで梨状筋の痛みを誘発するテストです。)
筋肉の状態
今回のケースでは梨状筋が単なる緊張ではなく、硬結と呼ばれる状態になっていました。
筋肉は過剰に緊張しすぎることで血流が押し出され、さらに緊張し、しこりのような状態になります。
これが「硬結」です。
硬結が生じると、「放散痛」と呼ばれる神経線維に添わないな広がりを持った痛みを呈することがあります。
梨状筋の「放散痛」は臀部だけでなく、大腿部後面やふくらはぎまで痛みや違和感、痺れ感などを呈します。
そのため、今回の患者様も症状がひどくなると太ももの後にピリピリとした違和感も訴えていたのです。
まとめ
このような検査結果から、梨状筋が過剰に緊張し、硬結が出来たことと、梨状筋自体で坐骨神経を圧迫ていた事が考えられます。
今回問題を起こしていた梨状筋はかなり深い筋肉ですので、目的を持って施術しない限り、深さが足りなく、効果を出せないことが多々あります。
なんとなく痛い部位に電気治療を行ったり、マッサージを行うことで症状は改善しない事が多い様です。
施術の流れ
骨盤の調整と股関節の矯正を行いました。
その後筋力検査を行い、正常な出力を確認できた後で、股関節周囲の筋肉に緩和操作を行いました。
梨状筋だけでなく、拮抗関係にある筋肉も調整し、偏った筋緊張をしない様にしました。
施術後
痛み自体は1回の施術で60%減少し、2回目の施術でほぼ消失していました。
骨盤や股関節などの関節が安定性を保為には、10日間で3回くらいの調整がベストです。
これは、新しい関節位置情報を脳に癖つける為に必要な期間と回数です。
寝具の変更する際のアドバイス
今回のケースでは坐骨神経痛の発生の原因として引っ越しによる寝具の変更は大きく関与していると思われます。
実は寝具を変更した際には体が大きく変化します。
また多くの方が「枕が合わない」といったお悩みを多くお聞きしますか、これは枕が悪いのではなく、ご自身の体に問題があることが多いです。
どんなに性能の良い枕でも体の傾きによってその性能を生かせない場合があります。
枕やマットレスなど寝具を新調する際は、骨盤矯正、背骨の調整をお勧めいたします。
新調する前に体を正しい状態に調整し、正しい状態に合わせた寝具を選択します。
また、どんなに性能が良い寝具でも体に適合するまでに一定期間かかります。
そのため寝具を変更してから1週間から2週間の間に体の調整を再度行うことで体の変化に対する負担が少なく寝具との適合が行われます。
判断をする上で必要な確認すべき2つを挙げておきます。
- 国家資格を持っている(柔道整復師、指圧師・あん摩マッサージ指圧師)
- 学位がある(応用理学士・カイロプラクティック理学士)